トマスワンニャン:富増章成

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荻生徂徠『政談』の史料

 其上昔は在々に殊の外銭払底にて、一切の物を銭にては買わず、皆米麦にて買たる事、某田舎にて覚たること也、近年の様子を聞合するに、元禄の比より田舎へも銭行渡て、銭にて物を買事になりたり、…。

 

★昔は、米や麦で買っていたのに、元禄のころから田舎にも銭で物を買うようになった。元禄といえば、ワンちゃん将軍の徳川綱吉ですね。

 

 当時は旅宿の境界なる故、金無てはならぬ故、米をうりて金にして、商人より物を買ひて日々を送ることなれば、商人主と成って、武家は客也、故に諸色の直段武家心のままにならぬこと也、武家皆知行所に住する時は、不売米に事すむ故、商人米を欲しがることなれば、武家主となりて、商人客也、されば諸色の直段は、武家心のままに成る事也、是れ皆古聖人の広大甚深なる智恵より出たる万古不易の掟也、右の如くして米を至極に高直にする時は、御城下の町人皆雑穀を食する様に成べし

 

★旅宿はよく出ます。武士の毎日が旅人のような生活で、不安定だからキツいという意味です。

商人主と成って、武家は客也

は超有名フレーズ。

お金がなければたちゆかないから、米を売ってお金にして、商人より物を買わなければならない。だから、商人は主で、武士は客で、商人は武士の思うようにならない。

 

武士が知行地(地元のこと)にいれば、武士が米を売らなくていいし、商人が米を欲しがる。そうすれば、逆転して武士が主となって商人が客になるのだ…ということ。

 

武士が物価をコントロールするのがよいのだ。米を高く売れば、城下町の町人は雑穀を食うことになるだろう。

 

すごいことを言ってますね。

武士帰農論

という用語もよく出ます。